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お役立ちコラム

2021.12.17

税制改正について

令和4年度税制改正の基本的考え方

岸田内閣は、新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」という。)への対応に万全を期しつつ、未来を見据え、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトに、新しい資本主義の実現に取り組むこととしている。
そのためには、企業が研究開発や人的資本などへの投資を強化し、中長期的に稼ぐ力を高めるとともに、その収益を更なる未来への投資や、株主だけでなく従業員や下請企業を含む多様なステークホルダーへの還元へと循環させていくことを通じ、企業として持続的な成長を達成するという本来の使命をより一層果たしていくことが必要不可欠である。こうした観点に立ち、賃上げを積極的に行うとともに、マルチステークホルダーに配慮した経営に取り組む企業に対し、税制上の措置を抜本的に強化する。

また、スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーションを更に促進するための税制措置を講ずることで、新たなビジネス、産業の創出を進めるとともに、既存企業の事業革新を促し、付加価値の向上につなげる。地方を活性化し、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、地方でのネットワーク整備を加速する等の観点から、5G導入促進税制を見直す。過疎化や高齢化といった地方の課題の解決及び地方活性化に向けた基盤づくりとして、地方税の充実確保を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系を構築することが必要である。

本年10月に国際課税制度の見直しに係る歴史的な合意が実現した。これは、デジタル化を含む経済実態の変化に対応するとともに、過度な法人税の引下げ競争に歯止めをかけ、企業間の公平な競争環境の整備に資するものであり、強く歓迎する。わが国は、本合意の国際的な実施に向けて引き続き主導的役割を果たすとともに、国内において、国際合意に則った法制度の整備を進める。経済あっての財政との考えの下、足元及び中長期的な成長に向けた課題に対応しつつ、財政健全化に向けて引き続き改革を続ける。税制については、経済社会のあり方に密接に関連するものであることから、今後ともその構造変化や国際的動向等を踏まえ、再分配機能の向上を図りつつ経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を構築する観点や、働き方への中立性の確保、格差の固定化防止、簡素な制度の構築、デジタル化の活用等納税者の利便性の向上といった観点から、検討を進める。

以下、令和4年度税制改正の主要項目及び今後の税制改正に当たっての基本的考え方を述べる。

1.成長と分配の好循環の実現

(1)積極的な賃上げ等を促すための措置

「成長と分配の好循環」の実現に向けて、長期的な視点に立って一人ひとりへの積極的な賃上げを促すとともに、株主だけでなく従業員、取引先などの多様なステークホルダーへの還元を後押しする観点から、賃上げに係る税制措置を抜本的に強化する。具体的には、継続雇用者の給与等支給額及び教育訓練費を増加させた企業に対し、給与等支給額の増加額の最大30%を控除する措置を設ける。その際、資本金10億円以上かつ常時使用従業員数1,000人以上の大企業に対しては、マルチステークホルダーに配慮した経営への取組みを宣言することを要件とする。中小企業については、賃上げを高い水準で行うとともに、教育訓練費を増加させた場合に、給与等支給額の増加額の最大40%を控除する措置を設ける。賃上げに係る税制措置としては過去最高水準の税額控除率となるこの税制も活用しつつ、企業が基本給を含む賃上げや人的資本の拡充、下請け先との取引適正化をはじめとする多様なステークホルダーへの還元に着実に取り組み、「成長と分配の好循環」が早期に起動することを期待するとともに、取組みの結果やこの税制がもたらす効果を注視していく。あわせて、収益が拡大しているにもかかわらず賃上げも投資も特に消極的な企業に対し、租税特別措置の適用を停止する措置を強化する。

(2)オープンイノベーション促進税制の拡充

スタートアップを徹底支援するとともに、既存企業の事業革新を促すことに より、企業が生み出す付加価値の向上につなげることも、「成長と分配の好循 環」の実現に向けて必要不可欠である。スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーションを更に促進する観点から、資金の払込みによる出資 -3- の一定額の所得控除を認めるという極めて異例の措置であるオープンイノベー ション税制について、対象に設立 10 年以上 15 年未満の研究開発型スタートアップを追加する等の拡充を行った上で2年間延長する。

(3)未来への投資等に向けた経済界への期待

令和4年度税制改正においては、賃上げに係る税制措置を抜本的に強化する とともに、オープンイノベーション税制も拡充するなど、「成長と分配の好循 環」を早期に起動させるために、思い切った税制措置を講じている。歳出面に おいても、科学技術の振興等を目的として、大胆な措置が講じられているとこ ろである。こうした取組みの趣旨を踏まえ、経済界に対しては、「成長と分配 の好循環」の実現と、ひいては「コロナ後の新しい社会の開拓」に向けて、より積極的に役割を果たすよう求めたい。 近年、企業の前向きな投資や賃上げを促す観点から、法人実効税率の引下げ をはじめとする様々な税制上の取組みを行ってきた。しかしながら、わが国の 賃金水準は、実質的に見て30 年以上にわたりほぼ横ばいの状態にあり、その 伸び率は他の先進国に比して低迷している。人的資本や無形資産への投資の規 模や、設備の経過年齢を見ても、主要国に見劣りする水準にある。

その一方で、 株主還元や内部留保は増加を続けており、コロナ禍を受けてもその傾向は変わっていない。企業がイノベーションよりも経費削減や値下げに競争力の源泉を 求め続けた結果、経済全体としては縮小均衡が生じてしまってきた。そのような企業行動の変容をもたらすべく、コーポレートガバナンスの強化や様々な分 野における規制改革等と並んで取り組んできた近年の累次の法人税改革も、意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ない。 「成長と分配の好循環」は、企業が果敢に事業の革新に取り組み、付加価値 の高い製品・サービスを生み出すことでマークアップ率を高めるとともに、そ の利益を元に次なる投資を行いつつ、株主だけでなく従業員、取引先、地域社 会などの多様なステークホルダーに継続的に還元し、企業収益の更なる増加に つなげていくことで実現する。

「コロナ後の新しい社会の開拓」に向けて、デ ジタルトランスフォーメーションや脱炭素化、「人」への投資などへの取組み がより一層重要となる中、他の先進国との間に生じてきた所得や競争力の差を縮小するためにも、企業においては、リスク回避や横並びの意識を排してアニ マルスピリッツを取り戻し、イノベーションに挑戦することが期待される。政 府においても、個々の企業が担うことは難しい研究開発支援や、非正規労働者 やフリーランスを含めた社会全体の人的資本拡充など、企業が未来への投資に 踏み切るに当たり必要となる環境の整備が、これまで以上に求められる。

このような認識の下、来年以降、経済界の取組状況等も見極めつつ、積極的 に未来への投資に取り組む企業に対しては真に有効な支援を行うとともに、十 分な投資余力があるにもかかわらず活用されていない場合に、企業の行動変容 を促すためにどのような対応を講ずるべきかといった視点からも、幅広く検討 を行う。

(4)地方活性化、災害への対応

① 地方拠点強化税制の拡充
わが国は急速な人口減少局面にあり、その傾向は地方においてより顕著である。他方、コロナ禍において若者や企業の地方移転への関心が高まるなど、注目すべき変化も見られる。東京一極集中を是正する観点から、地方拠点強化税制について、雇用者増加要件の撤廃や情報サービス事業部門の対象への追加など、地方に移転する企業の実態を踏まえた見直しを行った上で2年間延長する。

② 5G導入促進税制の見直し
デジタル田園都市国家構想実現に向けては、5G全国ネットワークについて、高度なインフラを都市・地方で一体的に整備しつつ、特に条件不利地域における整備を加速することが重要である。また、企業等の多様な主体が自らシステムを構築するローカル5Gについても、社会課題解決や事業革新等に向け、導入を後押しすることが求められている。こうした観点から、5G導入促進税制について、対象となる設備やインセンティブ等の見直しを行った上で、3年間に期間を限定した上で延長する。

③ 農林水産物・食品の輸出拡大に向けた税制上の措置
農林水産物・食品の輸出をより一層拡大していくためには、輸出先国のニーズ等に対応するというマーケットインの発想に基づく取組みが重要である。農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律の輸出事業計画に基づき導入される製造設備や物流施設等に対し、税制上の措置を創設する。

④ 異常危険準備金制度の拡充
自然災害が多発傾向にあることも踏まえ、保険会社等の異常危険準備金制度について、火災保険及び風水害保険に係る特例積立率を10%に引き上げ るほか、特例積立率の対象となる保険種目の見直しを行う。

(5)住宅ローン控除等の見直し

本格的な人口減少・少子高齢化社会が到来する中、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた対策が急務となっている。こういった社会環境の変化等に対応した豊かな住生活を実現するためには、住宅の省エネ性能の向上及び長期優良住宅の取得の促進とともに、既存の住宅ストックの有効活用及び優良化を図ることが重要となる。
住宅ローン控除などの税制措置の見直しに当たっては、こうした考え方や現下の経済状況も踏まえつつ、所要の見直しを行うこととする。まず、住宅ローン控除については、4年間延長することとする。その際、消費税率引上げに伴う反動減対策としての借入限度額の上乗せ措置は終了し、住宅性能などに応じた上乗せ措置を講ずる。

具体的には、カーボンニュートラルの実現の観点から、新築住宅及びリフォームにより良質化した上で販売する買取再販住宅においては、認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅について借入限度額の上乗せ措置を講ずる。また、これまで新築住宅に限定していた上乗せ措置について、既存住宅においても講ずることとする。さらに、令和6年以降に建築確認を受ける新築住宅については省エネ基準の要件化を行うなど所要の措置を講じ、住宅分野の脱炭素化を推進する。

控除期間については、新築の認定住宅等について13年間とする上乗せ措置を講ずる。なお、この措置は、わが国の経済状況が感染症の影響によって依然として厳しい状況にあることを踏まえた当面の措置として行うものであり、今後の状況を踏まえて必要な見直しを行うこととする。
床面積要件については、令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅において、合計所得金額1,000万円以下の者に限り、40㎡に緩和する。

毎年の住宅ローン控除額が住宅ローン支払利息額を上回る状況が生じていることに対する平成30年度決算検査報告に対応する観点から、制度の簡素性も踏まえ、控除率を0.7%とするとともに、住宅ローン控除の適用対象者の所得要件は2,000万円に引き下げることとする。
東日本大震災の被災者による住宅の早期再建を引き続き支援する観点から、令和7年居住分以降対象地域の絞り込みを行いつつ、控除率及び借入限度額の上乗せ措置を講ずる。

また、所得税額から控除しきれない額を、所得税の課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)の範囲内で個人住民税から控除する。この措置による個人住民税の減収額は、全額国費で補塡する。住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について、格差の固定化防止等の観点から、非課税限度額を見直した上で、適用期限を2年間延長する。

(6)固定資産税等

景気回復に万全を期すため、土地に係る固定資産税及び都市計画税の負担調整措置について、激変緩和の観点から、令和4年度に限り、商業地に係る課税標準額の上昇幅を、評価額の2.5%(現行:5%)とする。

(7)中小・小規模事業者の支援

地域経済の中核を担う中小企業を取り巻く状況は、ますます厳しさを増しており、コロナ後を見据えて、生産性の向上や経営基盤の強化を支援していく必要がある。このため、所得拡大促進税制を拡充し、賃上げを高い水準で行うとともに、教育訓練費を増加させた場合に、給与等支給額の増加額の最大40%を控除することとした上で令和6年3月末まで1年間延長する。また、地方活性化の中心的役割を担う中小企業の経済活動を支援する観点から、中小企業における交際費課税の特例については、見直しを行うことなく2年間延長する。法人版事業承継税制については、平成30年1月から10年間の特例措置として、令和5年3月末までに特例承継計画の提出がなされた事業承継について抜本的拡充を行ったものである。今般の感染症の影響により計画策定に時間を要する場合もあるため、特例承継計画の提出期限を令和6年3月末まで1年間延長する。この特例措置は、日本経済の基盤である中小企業の円滑な世代交代を通じた生産性向上が待ったなしの課題であるために事業承継を集中的に進めるための時限措置としていることを踏まえ、令和9年12月末までの適用期限については今後とも延長を行わない。事業承継を検討している中小企業経営者の方々には、適用期限が到来することを見据え、早期に事業承継に取り組むことを強く期待する。

(8)経済と環境の好循環の実現

気候変動問題などの地球規模の課題が顕在化している。IPCCによれば、 極端な気象現象の増加や人の健康・生態系へのリスクは、工業化以降の平均気 温の上昇が1.5℃の場合において増加し、2℃においては更に増加すると予測されている。持続可能な開発目標(SDGs)を踏まえ、持続可能な社会を構築するためにも、パリ協定に基づき、脱炭素化に向けた取組みを加速することが重要である。わが国は、「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指すとともに、2030年度に2013年度比で温室効果ガスを46%削減することを目指し、更に50%の高みに向けて挑戦を続けることとしている。カーボンニュートラルへの取組みは経済社会の変革を伴うものであるところ、国内外の資金を最大限活用し、社会全体の適切な移行を支援しつつ、新しい投資や技術革新を促すことを通じて、産業の競争力と日本経済の成長力につなげる。わが国が新たに設定した意欲的な削減目標を実現するためには、技術革新及びその社会実装を進めるとともに、企業・個人を含めあらゆる行動主体が脱炭素を選好する社会を構築することが必要不可欠である。グリーン社会の実現にかかる利益の享受とともに必要な負担も国民全体で分かち合うといった視点が重要であることにも留意する。車体課税については、自動車業界がCASEに代表される100年に一度とも-8-いわれる大変革に直面する中、次のエコカー減税等の期限到来時に抜本的な見直しを行うことを前提に、一定の猶予期間を設けることとしたところである。車体課税の見直しに当たっては、令和3年度税制改正大綱で示した方針に基づき引き続き検討を進める。農林水産業の持続可能性を確保する観点からは、環境と調和した生産活動に取り組もうとする農林漁業者等を後押しすることが重要である。「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」(仮称)において規定される予定の「環境負荷低減事業活動実施計画」(仮称)に基づき導入される、環境負荷の原因となる生産資材の使用量を減少させる設備等、及び、「基盤確立事業実施計画」(仮称)に基づき導入される、化学農薬・化学肥料に代替する生産資材を製造する設備に対し、税制上の措置を創設する。

(9)その他考慮すべき課題

租税特別措置については、特定の政策目的を実現するために有効な政策となりうる一方で、税負担の歪みを生じさせる面があることから、真になものに限定していくことが重要である。このため、毎年度、期限が到るものを中心に、各措置の利用状況等を踏まえつつ、必要性や政策効果く見極めた上で、廃止を含めてゼロベースで見直しを行う。また、租税措置の創設・拡充を行う場合は、財源を確保することやいたずらに全体目数を増加させないことに配意する和3年度税制改正において講じた繰越欠損金の控除上限の特例については業適応計画の認定期限が令和4年8月1日に到来することから、今後の経況の変化も見極めた上で、令和5年度税制改正において、所要の経過措置じた上で廃止することを検討する全子法人株式等及び関連法人株式等の配当に係る源泉徴収の見直しにより和5年度の税収が減少すると見込まれること等を踏まえ、その影響を緩和するための必要な対応等について、令和5年度税制改正において検討する。

2.経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し

(1)個人所得課税のあり方

① 諸控除の見直し
個人所得課税については、わが国の経済社会の構造変化を踏まえ、配偶者控除等の見直し、給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の一体的な見直しなどの取組みを進めてきている。多様で柔軟な働き方が一層拡大する中、働く意欲を阻害せず、公平で、働き方に中立的な税制を構築していくことが重要である。今後も、これまでの税制改正大綱に示された方針や、令和2年分所得から適用となった改正の影響等も踏まえ、各種控除のあり方等を検討する。

② 私的年金等に関する公平な税制のあり方
働き方やライフコースが多様化する中で、老後の生活に備えるための支援について、働き方によって有利・不利が生じない公平な税制を構築することが、豊かな老後生活に向けた安定的な資産形成の助けとなると考えられる。
こうした観点から、令和3年度税制改正大綱では、私的年金等の拠出・給付段階の課税について、雇用の流動性や経済成長との整合性なども踏まえ、税制が老後の生活や資産形成を左右しない仕組みとするべく、諸外国の例も参考に給与・退職一時金・年金給付の間の税負担のバランスを踏まえた姿とする必要性について指摘した。私的年金や退職給付のあり方は、個人の生活設計にも密接に関係することなどを十分に踏まえながら、拠出・運用・給付の各段階を通じた適正かつ公平な税負担を確保できる包括的な見直しに向けて、例えば各種私的年金の共通の非課税拠出枠や従業員それぞれに私的年金等を管理する個人退職年金勘定を設けるといった議論も参考にしながら、老後に係る税制について、あるべき方向性や全体像の共有を深めながら、具体的な案の検討を進めていく。
なお、高所得者層において、所得に占める金融所得等の割合が高いことにより、所得税負担率が低下する状況がみられるため、これを是正し、税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある。その際、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないよう十分に配慮しつつ、諸外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行う。

③ 記帳水準の向上等
記帳水準の向上は、適正な税務申告の確保のみならず、経営状態を可視化し、経営の対応力を向上させる上でも重要である。加えて、今般の感染症への対応においては、中小・小規模事業者への給付金の支給や融資に際し、売上や資産・負債等の状況が適切に記録されていないため申請に手間取るなど、日々の適正な記帳の重要性が改めて浮き彫りになった。小規模事業者の半数以上が帳簿を手書きで作成しており、また、個人事業者の場合、正規の簿記の原則に従った記帳を行っている者は約3割にとどまっているのが現状である。また、個人の青色申告における簡易簿記は複式簿記に移行するための準備的な段階としての役割も期待されているところであるが、簡易簿記での申告者の3分の1超が10年以上簡易簿記による記帳を続けている状況にある。近年、普及しつつある会計ソフトを活用することにより、小規模事業者であっても大きな手間や費用をかけずに正規の簿記を行うことが可能な環境が整ってきていることも踏まえ、複式簿記による記帳を更に普及・一般化させる方向で、納税者側での対応可能性も十分踏まえつつ、所得税の青色申告制度の見直しを含めた個人事業者の記帳水準向上等に向けた検討を行う。

(2)相続税・贈与税のあり方

高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた経済の活性化が期待される。一方、相続税・贈与税は、税制が資産の再分配機能を果たす上で重要な役割を担っている。高齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることとなれば、格差の固定化につながりかねない。
このため、資産の再分配機能の確保を図りつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築していくことが重要である。わが国では、相続税と贈与税が別個の税体系として存在しており、贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から高い税率が設定されている。このため、将来の相続財産が比較的少ない層にとっては、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある一方で、相当に高額な相続財産を有する層にとっては、財産の分割贈与を通じて相続税の累進負担を回避しながら多額の財産を移転することが可能となっている。今後、諸外国の制度も参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。あわせて、経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっていることから、そのあり方について、格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある。

(3)外形標準課税のあり方

法人事業税の外形標準課税は、平成16年度に資本金1億円超の大法人を対象に導入され、平成27、28年度税制改正において、より広く負担を分かち合い、企業の稼ぐ力を高める法人税改革の一環として、所得割の税率引下げとあわせて、段階的に拡大されてきた。一方で、経済社会の構造変化に伴い、外形標準課税の対象法人の数や態様は大きく変化しており、今後、こうした原因・課題の分析を進めるとともに、外形標準課税の適用対象法人のあり方について、地域経済・企業経営への影響も踏まえながら引き続き慎重に検討を行う。また、外形標準課税の適用対象法人の法人事業税所得割について、年800万円以下の所得に係る軽減税率を見直す。

3.国際課税制度の見直し

経済のグローバル化が進展し、デジタル技術が経済活動の隅々まで浸透する中、 モノを中心とした時代に形成された国際課税原則(「恒久的施設(PE:Permanent Establishment)なければ課税なし」等)が適切に機能せず、市場国 で公平な課税を行えないといった問題が顕在化している。
また、過度な法人税の引下げ競争により各国の法人税収基盤が弱体化するとともに、企業間の公平な競争条件が阻害されるといった状況が生じている。こうした国際課税上の課題への対応は喫緊の課題であるとの認識のもと、本年10月、OECD/G20「BEPS(注)包摂的枠組み」において、国際的な合意がまとめられた。本国際合意は、税制の不確実性をもたらす一国主義的な課税措置の拡散を防止する観点から、100年来続いてきた国際課税原則を見直し、市場国に新たな課税権を配分するものである。加えて、グローバル・ミニマム課税の導入は、法人税の引下げ競争に歯止めをかけるとともに、わが国企業の国際競争力の維持及び向上にもつながるものである。わが国は、BEPSプロジェクトの立上げ時から、国際課税改革に関する議論を一貫して主導してきたところであり、本国際合意を強く歓迎する。
(注)Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転
今後、本国際合意の実施に向け、多国間条約の策定・批准や、国内法の改正が必要となる。制度の詳細化に向けた国際的な議論に引き続き積極的に貢献するとともに、国際合意に則った法制度の整備を進める。その際、わが国企業等への過度な負担とならないように既存制度との関係などにも配慮しつつ、国・地方の法人課税制度を念頭に置いて検討する。国際的な租税回避や脱税への対応については、引き続き、国際的な議論や租税回避の態様等を踏まえ必要な見直しを迅速に行っていく。また、コロナ後において見込まれる国境を越えたビジネスや人の往来の再拡大を踏まえ、非居住者の給与課税のあり方について、今後検討を行っていく。あわせて、国際課税制度が大きな変革を迎える中、国内法制・租税条約の整備及び着実な執行など適時に十全な対応ができるよう、国税当局の体制強化を行うものとする。

4.円滑・適正な納税のための環境整備

(1)適格請求書等保存方式への円滑な移行

消費税の複数税率制度の下において適正な課税を確保する観点から、令和5年10月に施行される消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)について、円滑な制度移行に向けて政府・与党は一体となって万全の対応を進める。このため、事業者に対するプッシュ型の周知・広報や説明会の開催だけでなく、事業者団体とも連携しながら、経営相談等に係る体制を強化するといった取組みを更に進めていく。また、民間団体と連携して電子インボイスの社会実装に向けた取組みを推進するとともに、IT導入補助金等により制度移行もきっかけとした中小事業者の取引やバックオフィスのデジタル化を支援することで、中小企業の生産性向上を後押ししていく。加えて、持続化補助金により制度移行等の環境変化を見据えて取り組む小規模事業者も着実に支援していく。さらに、制度移行にともなって免税事業者である小規模事業者が不当な取扱いを受けないよう、免税事業者等との取引に関する独占禁止法、下請法、建設業法における取扱い等を明確化して周知するとともに、それらの法令に基づいて、相談窓口での対応や、下請Gメンや書面調査による状況把握を通じて適切に対処する。これらの取組みを着実に進めつつ、引き続き、事業者の準備状況等を丁寧に把握し、必要な対応を行う。

(2)税理士制度の見直し

コロナ後の新しい社会を見据え、税理士の業務環境や納税環境の電子化といった、税理士を取り巻く状況の変化に的確に対応するとともに、多様な人材の確保や、国民・納税者の税理士に対する信頼と納税者利便の向上を図る観点から、税理士制度の見直しを行う。
具体的には、税理士がその業務のICT化等を進める努力義務の創設や、税理士試験の会計学科目における受験資格の不要化、税理士法人が行うことのできる業務範囲の拡充等の措置を講ずる。

(3)記帳義務の不履行及び特に悪質な納税者への対応

適正な記帳や帳簿保存が行われていない納税者については、真実の所得把握に係る税務当局の執行コストが多大であり、行政制裁等を適用する際の立証に困難を伴う場合も存在する。記帳義務の不履行や税務調査時の簿外経費の主張等に対する不利益がない中では、悪質な納税者を利するような事例も生じているところである。
記帳義務及び申告義務を適正に履行する納税者との公平性の観点に鑑み、帳簿の不保存・不提示や記帳不備に対し、意図しない記帳誤りや帳簿の作成能力に配慮した上で、その記帳義務の不履行の程度に応じて過少申告加算税等を加重する仕組みを設ける。また、納税者が事実の仮装・隠蔽がある年分又は無申告の年分において主張する簿外経費の存在が帳簿書類等から明らかでなく、税務当局による反面調査によってもその取引が行われたと認められない場合には、当該簿外経費は必要経費・損金に不算入とする措置を講ずる。

(4)財産債務調書制度の見直し

財産債務調書制度について、提出期限を緩和するなど提出義務者の事務負担の軽減を図るとともに、適正な課税を確保する観点から、現行の提出義務者に加えて、特に高額な資産保有者については所得基準によらずに本調書の提出義務者とする措置を講ずる。

(5)税務手続のデジタル化・キャッシュレス化による利便性の向上

デジタル技術を活用し、納税者がいつでも・どこでも簡単に手続きを行うことができる環境の整備が重要である。このため、住宅ローン控除の適用にあたり必要となる住宅ローン年末残高証明書の納税者による提出を不要とするなど、 e-Tax の利便性を向上させる取組みを進めるとともに、登録免許税や自動車重 量税におけるキャッシュレス納付制度の創設等を行う。また、地方税務手続に ついても、電子申告・申請手続の拡大や電子納付の対象税目の拡大などeLTAX(地方税のオンライン手続のためのシステム)を活用した全国統一的な 対応を一層進める。 デジタル化やキャッシュレス化に対応した税制のあり方や納付方法の多様化 について引き続き検討していく。

5.その他

(1)新たな沖縄振興等に向けた措置

令和4年度以降の新たな沖縄振興に向けて、各特別地区・地域に係る税制について、沖縄の政策課題の解決のために一層効果的なものとなるよう、事業者の計画が県の分野別計画に適合するものであることを県が認定した上で、国が課税の特例の適用要件を満たしているかを確認する制度を導入する等、所要の見直しを行った上、その適用期限を3年間延長する。また、沖縄の復帰に伴う激変緩和措置として設けられた沖縄県産酒類に係る酒税の特例は、復帰50年を迎え、酒類製造業界から自発的かつ積極的な提言がなされたことなどを踏まえ、沖縄の酒類製造業の自立的発展に向けた施策の一環として、酒類製造業者への影響や予見可能性などを考慮して最長10年をかけて段階的に廃止する。

(2)ガス供給業に係る法人事業税の課税方式の見直し

ガス供給業については、令和4年の導管部門の法的分離、他のエネルギーとの競合や新規参入の状況とその見通し、行政サービスの受益に応じた負担の観点、地方財政や個々の地方公共団体の税収に与える影響等を考慮の上、これらの法人に対する法人事業税の課税方式の見直しを行う。

(3)屋外分煙施設等の整備の促進

望まない受動喫煙対策の推進や今後の地方たばこ税の継続的かつ安定的な確保の観点から、地方たばこ税の活用を含め、地方公共団体が駅前・商店街などの公共の場所における屋外分煙施設等のより一層の整備を図るよう引き続き促すこととする。

(4)IRに関する税制

IRに関する税制については、区域整備計画の認定等の手続きの進捗状況を見据えながら、令和3年度税制改正大綱に示された方向に基づき、令和5年度以降の税制改正で具体化する。

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