新型コロナウイルスの影響で売り上げが急減した事業者を支えるため、固定費の中で大きな割合を占める「地代・家賃」の負担を軽減しようとするのが家賃支援給付金です。休業中の雇用を維持するため、人件費には雇用調整助成金で一定額が給付されますが、たとえ売り上げが減っても、休業をしても、地代家賃の額は原則として減ることはありません。家賃支援給付金は、コロナ禍で売上減少に苦しむ事業者にとっては大きな支援策となりそうです。その概要は、次のとおりです。
⑴ 受給の要件
資本金10憶円未満の中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業者等であって、次の①と②の要件を満たす必要があります。
① 自らの事業のために占有する土地・建物の賃料を支払っていること。
② 令和2年5~12月において以下のいずれかに該当すること
イ いずれか1カ月の売上高が前年同月比で50%以上減少
ロ 連続する3カ月の売上高が前年同期比で30%以上減少
借地の賃料も対象で、借地上に賃借している建物が存在するか否かは問いません。駐車場や資材置場などとして事業に使用している土地の賃料も含まれます。
しかし、自己保有の土地・建物のローンを支払い中の場合は対象外となります。個人事業者の「自宅」兼「事務所」の家賃は対象となりますが、確定申告書における必要経費計上額などで、自らの事業に使用する部分に限られます。
⑵ 給付額
給付額は申請時の直近1カ月における支払賃料に基づき算定され、算定した月額給付額の6倍の支給とされています。法人の場合は、直近の支払家賃75万円まで給付率3分の2、超過部分は3分の1が最大600万円まで支給されます。個人事業者の場合は、直近の支払家賃37.5万円まで給付率3分の2、超過部分は3分の1が最大300万円まで支給されます。
⑶ 申請に必要な資料
持続化給付金と同様に、「確定申告書類・減収を証明する書類」などに加え、「不動産の賃貸借契約書(家賃額・契約期間等)、賃料の支払い実績を確認できる通帳の写し・賃料の支払い実績を示す書類(支払明細書、領収書など)が必要となります。詳細については図表3を参照してください。
⑷申請から入金まで
申請は電子申請(オンライン)のみで受付けです。パソコンからでもスマートフォンからでも申請することができます。
給付金の申請の期間は、2020年7月14日から2021年1月15日までです。 電子申請の締め切りは、2021年1月15日の24時まで。 締め切りまでに申請の受付が完了したもののみが対象となります。
申請があると家賃支援給付金事務局で、申請内容の確認が行われます。もし申請に不備があった場合は、事務局より申請者本人宛にメールとマイページへの通知があります。
給付が決定すると事務局より、申請者本人および賃貸人または管理業者宛てに給付通知書を発送し、登録の口座に振り込みが行われます。
⑸不正受給の調査とペナルティ
不審な点がみられる場合などには、申請者およびその関係者に対する、関係書類の提出要請、事情聴取、立入検査などの調査があります。不正受給が判明した場合には、給付金の全額に、不正受給の日の翌日から返還の日まで、年 3%の割合で算定した延滞金を加え、これらの合計額にその 2 割に相当する額を加えた額をペナルティとして支払わなければなりません。また、不正受給者の名前が公表されます。
図表1 給付金の対象になるもの・ならないもの
対象になるもの | ・借地の賃料 ・駐車場、資材置場として事業に使用している土地の賃料 ・法人が社宅・寮に用いる物件を賃貸借契約等に基づいて借り上げて従業員を住まわせ、当該物件の賃料を当該法人の確定申告等で地代・家賃として計上しているもの |
条件付きで対象になるもの | ・管理費や共益費(賃貸借契約において賃料と一体的に取り扱われている場合) |
対象にならないもの | ・自己保有の土地建物について、ローンを支払中の場合の支払ローン等 ・賃貸人が会社の代表取締役である場合など、賃貸借契約の賃貸人と賃借人が実質的に同じ人物の取引(自己取引) ・賃貸借契約の賃貸人と賃借人が配偶者または一親等以内の取引(親族間取引) |