新型コロナウイルスの感染拡大により中小企業に大きな影響が出ています。これに対応し、公庫の特別貸付やセーフティネット貸付、商工中金の危機対応融資、保証協会のセーフティネット保証(4号、5号)などの特別融資制度が設けられました。
1.日本政策金融公庫
⑴ 新型コロナウイルス感染症特別貸付
新型コロナウイルス感染症の影響により売上が減少した小規模事業者の資金繰りを支援するため、別枠1,000万円の融資です。最近1か月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している小規模事業者が対象となります。
⑵ 新型コロナウイルス対策マル経融資
マル経融資は、商工会議所等の経営指導員による経営指導を受けた小規模事業者に対して、公庫が無担保・無保証人で融資を行う制度です。特例により最近1か月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している場合を対象としています。
⑶ セーフティネット貸付
社会的、経済的環境の変化などの外的要因により、一時的に売上の減少など業況悪化を来しているが、中期的には、その業績が回復し、かつ発展することが見込まれる中小企業者の経営基盤の強化を支援する融資制度です。
特例により売上高減少にかかわらず、今後の影響が見込まれる事業者も含めて融資対象になります。
⑷ 特別利子補給制度
上記⑴⑵により借入を行った企業のうち、売上高が急減した事業者などに対して、利子補給を実施して実質無利息となります。
⑸ 借換えにより金利低減
既に公庫から借りている借入金からコロナウイルス対応融資への借換えが可能です。借換えにより金利の低減や無利息化が可能となり、また償還期間を延ばすことによりキャッシュフローを改善することができます。
2.商工中金
商工組合中央金庫が、新型コロナウイルス感染症による影響を受け業況が悪化した企業に対し、危機対応融資による資金繰り支援を実施しています。
信用力や担保に依らず一律金利とし、融資後の3年間まで0.9%の金利引き下げを実施します。据置期間は最長5年となります。
融資対象となるのは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化を来たし、最近1ヶ月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少した企業です。
業歴3ヶ月以上1年1ヶ月未満の場合(日本政策金融公庫の場合も同様です)、店舗増加や合併、業種の転換など、売上増加に直結する設備や雇用等の拡大している企業など、前年または前々年同期と単純に比較できない場合等は、最近1ヶ月の売上高が、次のいずれかと比較して5%以上減少していることが条件です。
a.過去3ヶ月(最近1ヶ月を含む。)の平均売上高
b.令和元年12月の売上高
c.令和元年10月~12月の売上高平均額
また商工中金にも日本政策金融公庫と同様の特別利子補給制度があります。
3.民間金融機関による保証付融資
⑴ セーフティネット保証
セーフティネット保証は、経営の安定に支障が生じている中小企業者を一般保証(最大2.8億円)とは別枠の保証を対象とする資金繰り支援制度です。
そのうちセーフティネット保証4号は、売上高が前年同月比20%以上減少している場合、幅広い業種で影響が生じている地域について、一般枠とは別枠(最大2.8億円)で借入債務の100%を保証協会が保証します。
セーフティネット保証5号は、売上高が前年同月比5%以上減少している場合、業種を指定して、一般枠とは別枠(最大2.8億円)で借入債務の80%を保証協会が保証します。
さらに上乗せの「危機関連保証」があります。セーフティネット保証とは、さらに別枠(最大2.8億円)で、全国・全業種を対象に100%保証します。
⑵ 実質無利子化
都道府県等による制度融資を活用して、民間金融機関にも実質無利子・無担保・据置最大5年・保証料減免の融資が行われます。利子補給ですので、企業は利息をいったん払うことになり、後日「利子が補填」されます。
またセーフティネット保証4号、5号、危機関連保証を利用の際にかかる保証料も減免されます。
⑶ 既往債務の借換え
信用保証付き既往債務も対象要件を満たせば、コロナウイルス対応の低利又は実質無利子融資への借換えが可能となります。既存の保証協会の借入を借り換える、または複数の借入を一本化させることで利息の低減や返済期間を延ばすことによりキャッシュフローの改善ができます。
保証付き融資については、まず、取引のある金融機関又は最寄りの信用保証協会に相談してください。次に、本店所在地の市区町村に認定申請を行い、認定申請書を取得し、保証付き融資の申込みをします。融資にあたり、別途、金融機関、信用保証協会による審査があります。
日本政策金融公庫と保証付きの民間金融機関の両方から融資を受けることもできます。
借換えにより利息の低減や債務の一本化も可能です。今回公表されているコロナウイルス対応融資を上手に活用してください。
図表 新型コロナウイルス対応融資の概要
名称 | 要件 | 融資内容 | |||
金利 | 措置期間 | 限度額 | |||
日本政策金融公庫 | 新型コロナウイルス感染症特別貸付 | 最近1か月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少など | 基準金利より3年間0.9%引下げ | 3年以内 | 別枠1,000万円 |
新型コロナウイルス対策マル経融資 | 最近1か月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少 | 基準金利より3年間0.9%引下げ | 3年以内 | 別枠1,000万円 | |
セーフティネット貸付 | 売上高減少にかかわらず、今後の影響が見込まれること | 基準金利:中小1.11%/国民1.91% | 3年以内 | 国民事業4,800万円/中小事業7.2億円 | |
特別利子補給制度 | ①個人事業主(小規模※1に限る):要件なし ②小規模事業者※1(法人):売上高15%減少 ③中小企業者(上記以外):売上高20%減少 |
利子補給期間/3年 | 補給対象上限:国民事業3,000万円/中小事業1億円 | ||
商工中金 | 危機対応融資 | 最近1ヶ月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少など | 基準金利より3年間0.9%引下げ | 5年以内 | 3億円(別枠) |
特別利子補給制度 | 日本政策金融公庫に同じ | 1億円 | |||
信用保証協会 | セーフティネット保証4号 | 売上高が前年同月比20%以上減少 | 保証協会が100%保証 | ― | 8千万円(別枠) |
セーフティネット保証5号 | 売上高が前年同月比5%以上減少 | 保証協会が80%保証 | ― | 8千万円(別枠) | |
危機関連保証 | 売上高が前年同月比5%以上減少 | 保証協会が100%保証 | ― | 8千万円(別枠) | |
無保証料・無利子 | セーフティネット保証と危機関連保証に一定要件で適用 | 利子補給により無利子 | 3年 | 3000万円 |
※1 小規模の要件は、①製造業、建設業、運輸業、その他業種は従業員20名以下、②卸売業、小売業、サービス業は従業員5名以下